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A列車で行こう はじまる観光計画

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A列車で行こう はじまる観光計画が3月12日に発売されました! 自分はだいぶ前から予約を取りまして発売日にパッケージ版が到着しましたので遊んでみました。

この記事では、 A列車で行こうDS から始めたプレイヤーの視点で、本作で良かったことや惜しいことなどを紹介します。

A列車で行こうとはなにか?

かなりざっくり言えば 鉄道版シムシティ です。プレイヤーは鉄道会社の社長となって鉄道路線を作ったりして街づくりをします。阪急の設立者である小林一三さんが考えた都市開発を丸々シミュレーションすることができます。1985年に最初のゲームが出ておよそ35年が経ちました。

現在は2つの系列に分けて販売しており、経営重視の「箱庭系列」と再現重視の「リアル系列」となっています。後者は「A列車で行こう9 (Exp)」が最新作という位置付けで、前者はこれから紹介する「A列車で行こう はじまる観光計画」となります。

自分とA列車で行こうとの関わりについては自分のポートフォリオで書いていますのでそちらをご覧ください。

www.aokashi.net

簡単な解説

本作では前述の通り鉄道路線を作ることはもちろん、バス路線を作ったり、貨物列車やトラックなどで荷物を輸送したり、子会社を経営したりできます。株の売買や銀行の融資も可能で、プレイするたびに経営を知ることができます。自分もその1人で、中学生頃にA列車で行こうDSを遊んでいましたが、黒字や赤字、総資産、総資本などについてはこのおかげで知ることができました*1

ゲームは大きく分けて「シナリオモード」と「コンストラクションモード」の2つがあります。普通にプレイするのであれば前者のシナリオモードで、コンストラクションモードはシナリオモードでプレイされるシナリオを自分で作ることができます。

クリア目標については、シナリオによってまちまちで、例えば最初のシナリオである「はじまる観光計画」では1年の観光客数が20万人を超えて、なおかつ街の人口が2万人を超えた場合にクリアとなっています。プレイ時間については簡単なもので大体10時間程度だと思います。

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鉄道路線は建物の多いところ同士つなぐと、作った駅を中心に家や建物が建つようになります。そして駅と列車に収益が発生します。これがA列車で行こうの基本です。しかしながら、プレイヤーはせっかちなものなので、短期間でたくさん稼ぎたい場合は子会社や資源の売買などで稼ぐ、いわゆる「事業の多角化」をしなければなりません。バス路線については、鉄道路線だと輸送過剰で赤字になってしまう場合に使用する感じです。

そして、本作の新要素として観光の概念が存在します。街にはどこかに観光名所が存在します。東西南北の隣街から観光名所までの輸送ルートを作って観光客を呼び込むことができます。

本作のゲームクリアに関わる要素ではありませんが、会話イベントを通じてプレイ途中でキャラクター同士の会話も見られます*2。時代ごとの流行が見られて面白いです。

この他にも、当時何があったのか時事ニュースが流れる点も面白いです。

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ざっとこんなものですが、現実を再現するシミュレーションゲームである以上、細かい説明ができません。本作の基本である「鉄道路線」と「観光」が体験できる体験版が配信されていますので気になるのであれば遊んでみると良いと思います。

本作の新要素

前作のA列車で行こう3Dと比較した内容について記載しています。スクリーンショットにはみんなのA列車で行こうPCのものも含まれています。あれは内容的にはA列車で行こう3Dと一緒ですのでお許しください。ここではA列車で行こう3DとみんなのA列車で行こうPCを「前作」と呼びます。

観光

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本作の新要素である観光は、前述の通り東西南北の隣町から観光客を呼び込むことができます。これにより、運営している鉄道会社の路線を使ってもらうことができ、収益に一役買ってくれます。

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観光客を呼び込むためには、交通機関を整備する必要がありますが、交通機関は鉄道でも道路でもフェリーでも何でも構いません。鉄道から道路、フェリーから鉄道など、交通機関が異なる場合でも、公共交通機関さえ整っていれば観光客は乗り換えをしてくれます。自分では実践していませんが、隣町を介した接続でも観光客は乗り換えます。

観光客の数はその観光名所の集客力によって異なりますが、バス路線を介した乗り換えについては、バス路線の増強をしたほうが良いと思います。長距離の道路を1つのバスで往復しただけでは、 間違いなくボトルネックになります。逆に鉄道路線については1編成あたりの輸送力が大きいため、たくさんの観光客を載せることができます。

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ちなみに観光名所は用地買収が可能なので破壊可能だそうです。

車両カスタマイズ

本作のポイントの一つ。とにかく楽しい、眺めているだけでも楽しいです。

これは列車や自動車などを自分好みのデザインにカスタマイズすることができます。まずは車種を決めて、その後装備を選んだりし、ステッカーを貼って完成です。

・・・と終わらないのが本作の魅力。車種は鉄道車両で24種もあり、装備は「貫通扉」「スカート(排障器)」「ライト」「ドア」「窓」「空調装置」から選べ、ステッカーは様々な図形からたくさん貼ることが可能。車種によっては選べない項目もあったりしますが、自分が望んでいた「架空車両を簡単に作れたらいいなあ」がコレで実現できてしまうものですから、びっくりするもんです。

余談ですが、自分が高校生だった2013年頃はプログラミングの知識が整ったところで、架空車両の画像を簡単に作れるツールの開発を考えたことがありました。結局装備の配置をどうすべきか悩んでしまい開発に踏み込むことはありませんでした。現在は自分でドット絵を作ってなんとかなっています。にしても面倒だなあ。

それぞれの車種には実在の車両をモデルにしていることがあるため、あえてモデルの車両を再現してみるのも良さそうです。分かる範囲でいうと下記の通り。

車種 モデル
普及型通勤列車 103系
標準型通勤列車 201系
地下鉄型通勤列車 05系
改良型通勤列車 E233系
次世代型通勤列車 E235系
標準型近郊列車 113系
通勤兼用型近郊列車 211系
改良型近郊列車 313系
初期型特急列車 151系
標準型特急列車 485系
通勤兼用型特急列車 185系
改良型特急列車 287系

また、車両の設計図は「装備タイプ」から引き継いでデザインすることが可能なので、ブラッシュアップもできます。その際に余った設計図は列車の購入画面から削除することは可能なんですが、ユーザーインターフェイスの都合上分かりにくいです。

それと、前作まであった車両の性能のアップグレードはできません。これまでの2作品の車両のアップグレードの仕組みは下記の通りです。

A列車で行こうDS: 車両を開発するごとに開発ポイントが貯まり、貯めた開発ポイントでより高性能な車両を開発することができる。

A列車で行こう3D: 車種を選び、その車種に対して性能を上げたい箇所を1つだけ選ぶことができる。 開発した車両の設計図をベースに改良することも可能だが、より高性能な車両を作るには度重なる改良が必要になり長い道のりとなる。

A列車で行こう はじまる観光計画: 車種毎に性能が決まっていて、性能を上げることはできない。

都市開発

建物の建築に資材が不要になりました。前作までは資材が必要だったのですが、資材の輸送ルートの確保しなくてはならず、面倒に感じていました。この仕様変更で、よりお手軽に都市開発できるのではないかと思います。

また、建設会社の建設場所の選定が賢くなりました。前作までは小路を潰してまで建設されたり、娯楽産業を増やすために観覧車が建設されまくったりしていましたが、こういったことがなくなりました。後者については「産業比率」の概念があったことが原因で、比率が少ない産業を建設会社は積極的に建設しようとしていましたが、本作ではその概念が廃止になっています。

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前作では小さい産業を伸ばそうとして画面のようにダブル観覧車が作られることもあった。

ただし、下記のように一部の建物では小路を潰して建設する場合もあります。

あと、道路は自治体の所有となったため、道路を敷設すると敷設にかかった費用ごと「寄付金」として損失に計上されるようになりました。この仕様については「道路まるごと鉄道会社が所有しないのが普通だからごく自然の流れに変わって良かった」と思う自分と「寄付金として計上するけどまさか土地代含めて支払わないといけないのか」と思う自分がいて少し不安になりました。というのも、自分は前作のプレイスタイルとして、美しい街づくりを実現するために道路を敷設する場所には予め用地として買収していた経緯がありました。このプレイスタイルで本作をプレイすると、寄付金が膨れ上がって赤字になるのではないか?と心配していました。

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前作で道路敷設のために用地を取得している例。画面上に注目。

実際にプレイしてみると、この疑問は解消されました。これは建設会社の建設場所の選定が賢くなったことと、発展に応じて自動的に道路が敷設されるようになったことから、自分自身が道路を積極的に敷設しなくても良くなったからです。前作では小路は勝手に敷設してくれたのですが、道路に変わることはなく、建物建設で塞がってしまうなんてこともありました。道路敷設を意識しないで鉄道会社の経営に没頭できるのはいいですね。

運行計画

設定できる発車条件がホーム別になりました。前作では偶数ホームと奇数ホームしか別々に設定できなかったのです。

また、発車条件に「貨物待ち」が追加されました。

自動車の運行計画が経由ルートによる設定になりました。ただし、ユーザーインターフェイスに癖があるのか初めてではとっつきにくく、「そこは経由したくないんだけど」と思っても削除ができず慣れが必要です。この辺りは、自動車を置いた場所から置いた場所までの1周分のルートを構築すれば悩むことは無いと思います。ただ慣れている自分でも、自動車を経由ルートに置いたはずなのに運行計画が見つからないとして正常に動いてくれない場合もあります。

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自動車は配置した場所から配置した場所までの一周のルートから経由地を作ることになる。

また、分岐や方向の設定はタッチ操作でもできます。むしろタッチ操作できる携帯モードでのプレイがおすすめかもしれません。

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その他

線路/道路と建物のスケールが 1:1 になりました。その反面、線路の幅が不自然に広かったりしていますが、前面展望する分にはあまり違和感はなかったりします。ただし、この影響なのか、橋脚の間隔が狭くなったように思いました。普通に高架線路を敷設した場合、前作までは2マス間隔で橋脚が設置されていましたが、1マス間隔で橋脚が設置されます。複々線との立体交差を構築する場合は大変かもしれません。

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前作ではこんなジャンクションを作っていたけど、まさかできなくなるのでは・・・。

そしてマップ表示は 45℃ 単位でスムーズに回転することができます。RPGのマップのように見ることが可能で、自分自身「あーこれこれ!」となって謎の感動をしたことがあります。

その分前作と比べてロード時間が長くなりました。ロードは2段階に分かれ、まずはゲームデータのロードから始まり、次に街の準備 (おそらくレンダリング) に移って、完了するとようやく操作できるようになります。

また、セーブデータのセーブ操作は「上書き保存」と「追加保存」に変わりました。前作ではセーブデータを指定して上書き保存を行っていましたが、誤操作でセーブデータが消えた思いがありました。

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問題点

列車の設計図の廃止で触れたように、ユーザーインターフェイスが分かりにくいです。例えば列車購入の場合、左のリストメニューと右の操作メニューがありますが、どういう基準で振り分けたのか分かりません。分からなかった設計図の削除は右の操作メニューに割り当てていますが、自分は視覚的な変更を操作メニューに充てて、他をすべてリストメニューに充てたほうが分かりやすかったので、左のリストメニューに持っておきたかったのですが、誤操作防止の観点からこの振り分けにしたのかもしれません。

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設計図の削除は右上のマークかYボタン。言われないと分かりづらい。

線路や道路の敷設については、敷設地点の指定までは良いんですが、敷設の完了までは Bボタン→「決定」に移動→Aボタン とひと手間かかるようになりました。できれば +ボタン で決定できるようにしてほしかったのですが、これも誤操作防止の観点から実現しなかったのかもしれません。

また、本作では初めてシリーズを触れる際に余計な項目を隠す目的があったのか、拡張機能を用意しています。前作では混乱の原因となった回送ルート設定も拡張機能で隠せるのでそこは歓迎したいところなんですが、運行計画の複製や名前の変更といった「初めてシリーズを触れるプレイヤーでも使うだろう」と思う機能も拡張機能に含まれています。最初のシナリオである「はじまる観光計画」ではすべての拡張機能が使用できないため、運行計画の複製ができずに不満を抱いたプレイヤーもいたのではないでしょうか。

駅や子会社の建設では、コンストラクションモードを除きいくつか建設しないとすべて建設できない仕組みになりました。今作で初めてプレイする方なら大した問題ではないと思いますが、自分はターミナル駅や信号場が開放されていなかったため、仕方なく別の駅や貨物駅などで凌いでいたことがありました。

それと、マップの断面表示が廃止されました。自分は建築現場に地下足場があるかないかでどういった建物になるのか予想していましたが、それが簡単にできなくなりました。

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あ!これはきっとでっかい建物が建つだろうな~と想像するのが楽しかった

バグ

リリースして間もないことや、ソフトの更新が Nintendo 3DS よりも容易なこともあったのか、いくつかバグがあります。遊んだ限りだと下記の通り。

  • 資料写真の撮影がはじまらない → 1.0.2 で修正済?
  • 線路によっては架線柱が配置できない場合があり、意地でも設置しようとするとエラーで強制終了される
  • 複数の輸送ルートが存在する場合、一番所要時間の短いルートしか選定されない → 1.0.2 で修正済
    • 1日1本しか走らない観光特急を走らせるとその特急にしか乗客が集まらなくなり、観光課から苦情が来る
    • 最初は仕様だと思ったが、後にバグということが判明し、修正された
  • バス停留所と車庫の場所によっては、自動車の運行計画設定ができなくなる場合がある
  • セーブのプログレスバーが最後の段階で止まってしまい、いつ経っても動かない場合がある
  • セーブ途中でエラーで強制終了される場合がある
  • 列車の横後ろが通れず緊急停止する場合がある → 1.0.2 で発生したが、1.0.3 で修正済

この他にも、セーブデータがロードできないという致命的なバグも 1.0.3 まで発見されたようですが、幸い自分の方で出くわしたことはありませんでした。バグについては長時間遊ぶ程出くわすことが多いようです。被害を少しでも抑えるために毎月セーブをONにしておくことをおすすめします。

メーカーの ARTDINK では急いでバグの究明と修正を急いでいるようで、修正バージョンの 1.0.2 では発売翌週の月曜日に配信されました。バグ修正はいつ終わるのか分からないため、修正バージョンの配信時期は未定であるものの、「メモリリークが発生していた」というように内部的な原因が明らかになっていることから、実に究明と修正ができていて対応は良いと思います。しかしながら、修正したバージョンでまた別のバグが再発したこともあり、バグ修正はまだ急いでいるようです。

まとめ

  • 観光の要素は利用者の増加に貢献してくれるが、ボトルネックになる箇所が無いように輸送力の増強が必要になる
  • 車両のカスタマイズはすごく面白い、見方によってはこの要素が本作のメインポイントかもしれない
  • 資材要らずで建物が建つようになり、都市開発が楽になった
  • ユーザーインターフェイスは難あり
  • まだまだバグは多いので長時間遊ぶ際は要注意、毎月セーブはONにしておこう

A列車で行こう3D は A列車で行こうDS からの順当な進化となれば、A列車で行こう はじまる観光計画 は新しい要素を意欲的に取り入れた新作 というものだと思っています。2画面から1画面に、そしてタッチ操作なしでも操作するかもしれないという場面に適応したため、操作性はあまり良いものではありませんが、できること自体は前作よりもずっと楽しくなったので、 Nintendo Switch の利点である「どこでも遊べる」を活かしてこれからも遊んでいこうと思います。

個人的にはリアル系列の新作も期待したいところです。

www.artdink.co.jp

*1:ここで一番衝撃を受けたのは、線路を敷く=お金が消える訳ではないことで、実際は資金が線路という資産に移ったという見方だったりします。

*2:厳密に言うと、追加クリア条件や資金の増減など、ゲームクリアに関わる会話イベントもあります。